小田セン。

好きなものは、好きなままでいられるように。

新幹線変形ロボ シンカリオンZ 第5話「森を守れ!シンカリオンZ E7かがやき」第6話「振り抜け!友情のコウデンアツアックス!!」感想&解説 ~トモダチはパワー~

3機目のシンカリオンZ、E7かがやき。

その運転士候補は、長野は木曽にいる、戸隠タイジュ。

だが彼は一度、運転士の誘いを断っていた。

その理由は、「不器用だから」と本人は言うのだが…?

 

 ・強き身体、弱き心

アブト達は、タイジュをもう一度運転手へ誘う為に長野県を訪れていた。
以前にスカウトした際は都心部に住んでいたが、今は木曽の山林へ移り住んで、木こりである祖父・マサカリの手伝いをしているという。
性格はどことなく気が弱く、大人しめ。そして常に身体中にスプレーを吹き付けている。本人は制汗スプレーと言うが…?
その一方で生身でも野生のイノシシを投げ飛ばす力持ちで、森に対する情熱もアツい。そしてシンカリオンの適正はというと、鬼メタルが投げつける鉄の丸太ん棒を薪割りの要領で真っ二つに叩き割り、そして森を荒らされた怒りのパワーで敵を滅多打ちにしていた。
そこまでの適正を持ちながら、初陣の後はZギアを返却して帰ってしまった。「自分、不器用ですから…」と弱弱しく断り続けるタイジュ。そんなタイジュに対しアブトも、自分の方がよっぽど不器用なのに…と己の適正のなさを漏らすのだった。

…E7の運転士というのはどうも適合率以外で運転士になりづらいトコありますね。ツラヌキの場合は家が地元の土建屋で手放せないという家の事情でしたが、タイジュの場合は森の事だけでなくメンタル面に問題が…?という印象だったのが第5話。
そのアンサーは、次の回で明かされました。

・友達でありたいから

もう一度タイジュと会って話そうと再び木曾を訪れたシンとアブト。それでもタイジュの答えNOである事には変わりはないのだが、タイジュが森の仕事に拘る理由を教えたい、という祖父の提案で、タイジュはシンを赤沢自然休養林にある森林鉄道記念館へ案内する。一方アブトはタイジュの情報から一路鏡池へ。折角の鉄道保存施設なもののZコード探しを優先する事に。
記念館で、シンに森林鉄道や山の事を楽しそうに教えるタイジュ。そんなタイジュの姿に、シンは「良い顔になってきたじゃん!」とタイジュと記念撮影をする。
その様子をみて、祖父マサカリはシンにタイジュの過去を打ち明けた。タイジュは前の学校にいた頃、事故に巻き込まれそうになった友達を助けようとケガをさせてしまったのがきっかけで、クラスメイトに誤解され疎遠になってしまっていたのだ。だからシン達とも距離を置いてるのでは…と祖父は語る。
しかしシンは、それが分かっただけでも前に進んだ気がする、次に会った時はもっと友達になれる気がすると、前向きな面持ちだった。
タイジュがそれを、巨大怪物体が出現し、シンが出撃した後に祖父から聞いた時、自分がつまらない事に拘っていたことを恥じ、後からE7でシンの元へ駆けつける。
シンはE5ヤマノテへ、タイジュもアブトが解放したE353アズサでE7アズサへとZ合体し、あとは巨大怪物体、絶対雲外鏡(だからネーミング…)を倒すだけ…と思いきや、その姿が虫っぽいことから怯えてしまうタイジュ。あのスプレーは実は虫よけスプレーだったのだ。事態は一転窮地に追い込まれるシン。しかし今度こそ友達を助けるという想いがタイジュを突き動かし、持ち前のパワーで敵を蹴散らし、アズサコウデンアツアックスで見事撃退に成功した。流石に虫嫌いは直らなかったものの…

…大好きな森の事を話す事にはイキイキするのを見るに、本当は友達と好きな事を話し合いたかったんですな。それでも意図的に避けていたのは、親しくなったらまた友達を傷つけてしまうという不安からだったんですね。でも、シンカリオンの事はいったん置いておいて、ただ友達として触れ合いに心動かされた。ハナビ(というよりその父)の時もそうでしたが、シンって人付き合い方が上手いですよね。ハヤトの「他人の好きを尊重する」とは別なベクトルで相互理解を深め合ってます。
しかしまぁこうなると、ますますアブトとの対比が際立ってきますね…1%の望みに賭けるシン、何においても全力でやりきるハナビ、そして好きな事にとことん熱くなれるタイジュに対し、アブトは現実主義で、シンカリオンの事のみに心血を注ぎ、好きな鉄道の事よりもZコードを優先せざるを得ないという大人びた態度…3人の運転士が皆してアブトと対になっているというのがなんとも。これに本人が気づけるかが今後の鍵でしょうか。

・今回の鉄道ポイント:失われし「小さな鉄道」

5・6話で触れられた、かつて存在していた木曽森林鉄道
木材需要が急激に増えた明治時代、今ほど安定してない道路事情において、伐採した木材を効率的にかつ安全に輸送するためには、森林鉄道の存在が不可欠でした。全盛期には日本中に森林鉄道が敷設されれ、その総距離は当時の国鉄のそれを上回っていたとか。

森林鉄道は現在のJR線のような、国内の一般的な鉄道よりも規格が小さく、線路軌間も在来線のそれよりも狭い762mm、劇中でも言っていたように「ナローゲージ」と呼ばれる部類に入ります。入り組んだ地形に鉄道を通すには、規格が小さい方が急カーブを作れたりと都合が良かったからです。
こうした小さい規格の鉄道は昔は全国に数多くあり、森林鉄道のほかにも「軽便鉄道」と呼ばれる、一般的な鉄道よりも低規格・低コストで運営できる地方鉄道でも同じような規格が採用されたほか、炭鉱や鉱山から掘り出した鉱石を輸送する「鉱山鉄道」でもこの規格を採用した路線が存在しました。

しかし、小さい規格というのが災いし、軽便鉄道は道路網が発達した昭和時代になると貨物はトラックに、旅客はバスに転換される形で続々と廃止され、森林鉄道や鉱山鉄道も格安の海外産の木材・鉱石の台頭による林業・鉱山の衰退に合わせて廃止されていきました。
また、それなりに需要があった路線は早い段階から軌間を1067mmに広げられ、一般的な鉄道と同規格に格上げされました。現在のJR釜石線などがこれに該当します。

そんな感じで平成通り越して令和の現在、先述の赤沢自然休養林などで、有志の手によって森林鉄道や軽便鉄道の保存運転が行われている施設・団体が全国各地にあり、そこでのみかつての「小さな鉄道」をしのぶことが出来…
…と言いたいところですが、実は令和の今でも、運賃を払って乗車する、純然たる「公共交通機関」としての「小さな鉄道」が運行されている路線が三重県にあります。
それが、三岐鉄道北勢線と、四日市あすなろう鉄道内部・八王子線
この3路線は軽便鉄道として開業したものの、その後運営会社が幾度も変わるごとに時代に合わせた近代化・合理化・サービス改善を続けており、線路軌間こそ762mmですが、直流750Vで電化されており、電車によるワンマン運転も行われ、規格が小さいだけで他の地方鉄道と同じような運営になっています。
規格をアップデートしないまま近代化した結果。という、色々とユニークな鉄道、末永く残って欲しいものですね。

・宣戦布告

鏡池付近でZコードの解放に成功したアブト。そこでアブトが何かを察知し向かった先にあったのは、盛岡でも見た黒い結晶体を今まさに破壊しようとしていた巨大怪物体…!
そしてそこでアブトとワダツミが相対。遂に人類とテオティが接触し、ワダツミはアブトに宣戦を布告!

…ファーストコンタクトもう早い段階で…!そして次回、横川支部を襲撃!?
だいぶ展開が早いですが、奴等の目的からしてこれはまだ序章に過ぎないのでしょうね…果たしてこの先どうなる?