小田セン。

好きなものは、好きなままでいられるように。

新幹線変形ロボ シンカリオンZ 第8話「集結せよ!大宮支部再始動!!」感想&解説 ~アブトの脳裏~

大宮支部には行かないと決めたアブト。

理由も言わず大宮行きを断るのに納得がいかないシンは、単身アブトの元へ向かう。

そしてアブトの口から語られる、驚くべき事実…

そして、新生大宮支部の運用が始まる―――

 

・それは神のお告げか、それとも悪魔の囁きか

横川にあるアブトの実家に向かうシンだったが、ちょうど不在。ならばアブトのいそうな場所を…と旧丸山変電所へ向かうと、アブトの方からやってきた。またしても「俺をを捕まえてみろ!」と体力のいる追っかけっこを経て捕まえようとするが、このタイミングでまたしてもアブトに頭痛と共に謎のビジョンが。ここ最近立て続けに起こる現象…そして、アブトはすべてを打ち明ける。
アブトが横川に残る理由。それはZコードある所に存在すると思われる故に、横川ではまだ見つかってない結晶体を見つける事。そして、母・シラユキを一人横川に残しておきたくなかったからだった。父の失踪後、息子にだけは笑顔でいようと無理をしている母を放っておけなかったのだ。
更に「アブトの夢」の真相も打ち明けた。父が突然失踪した時から、夢の中で様々なビジョンが入り込むようになったという。そしてその中には、スマットや、シンカリオンZの設計図も…そして謎の厳つい新幹線と、シンカリオンのような謎のロボ。そして結晶体の前で手招きする父の姿。アブトは、父が何かを察知してアブトにすべてを託した。そう感じているという。
事情が分かったシンは、アブトに別れを告げた。「また会おう」と約束して…

…何故スマットやシンカリオンZが不可解なシステムで動いてるのか、それは「設計図通りに作ったらこうなった」に過ぎなかったんですね。開発拠点が横川支部だったのも、母を一人にさせたくないという点で合点がいきました。
しかし、あのビジョンはアブトが思った通り父からの警告なのか、それとも、「ルーク、暗黒面はいいぞ」的なアレで、父が何かを誘ってるのかどっちなんでしょうかね…

・懐かしい顔ぶれ

そして、舞台は懐かしの大宮支部へ。大宮支部は大宮の鉄道博物館の地下に設けられている。
ハナビとタイジュも正式に大宮支部所属となり、十河指令長以下、横川支部のスタッフの多くが大宮にそのまま異動。更にヴァルハラン戦以後、別の部署に異動していたかつての大宮支部スタッフの一部も再び大宮に配属された。
先んじて結晶体の研究をしていた研究員の三島ヒビキ、メディカル担当の久留米ミドリ、そしてオペレーターの三条ミノリと小山ダイヤと、懐かしい顔ぶれも集ったところで、新生大宮支部は発足する。
早速とばかりに田端上空に現れる敵。「オンボノヤスカモ」と名付けられたこの敵は、白い煙を撒き捕縛フィールド内を霧まみれにしたうえで、触手で敵の攻撃手段を悉く封じて同士討ちを狙う姑息な戦法に出る。これではロクに戦えない…とその時、アブトが大宮支部の指令室に現れた。
あの時、アブトはシンと別れた後、自分の事は大丈夫だからと母に押され、大宮に行く決心をしたのだ。
自分たちで風を起こして霧を吹き飛ばせばいい!という助言を受け、E7のパワーでE5とE6をふん回す事で霧を吹き飛ばす事に成功。霧が無くなればこっちのもんとばかりに見事敵を撃破した。だが…

…実家のような安心感な大宮支部。とはいえ、主要スタッフは横川支部からスライドなので、十河が引き続き指令長の椅子に。巨大怪物体のコードネームを指令長が決め、更にそのセンスが滅茶苦茶な様子には小山も「えぇ…」とたじろぎます。そりゃそうよ。本庄、あなたは今どこにいるんです…?(
しかしスタッフも横川からスライド+再招集なのを見るに、ヴァルハラン戦の後、大宮支部は殆ど休止状態だったんでしょうかね…? 元は新幹線の研究機関だったのに…それとも、もっと巨大な研究設備ができたとか?
ワダツミもだいぶ、行動思考がかつてのビャッコやゲンブのように、「相手の出方を見る」って感じにシフトしてきてますね。ただ、ワダツミの独断臭いので、その辺はやはりキトラルザスとは勝手が違うようですね…

・今回の鉄道ポイント:「アブト」の由来「アプト式」…とその後

碓氷「アブト」という名前の由来。鉄道に詳しい身にとってはやはりそうかとは思ってましたが、かつて碓氷越えで採用されていた、「アプト式」が由来でした。無理だと思われていた鉄道での碓氷越えを、アプト式が実現した…そうした「不可能を可能にする」思いから名付けられたんですね。
その機構は本編で分かりやすく説明されてたので、ここではその補足とその後について解説しましょう。

・広義は「ラック式」

我が国の鉄道路線ではアプト式しか採用例が無かったので誤解されがちですが、「アプト式」というシステム自体は「ラック式鉄道」の一種であり、アプト式以外にも、ラックレールと歯車を咬み合わせて急勾配を超えるシステムが存在します。
アプト式の最大の特徴は、歯の位置をそれぞれずらして3列並べたラックレール。これにより単純なラックレールよりもガッチリとパワーを伝えて登ることが出来るという寸法です。
現在でも大井川鐵道井川線にはアプト式による急坂越え区間があり、非電化である井川線においてこの区間だけ電化され、元々はナローゲージ規格だった小さい井川線車両より遥かに大きい電気機関車の補助によって運転されています。
ちなみに海外のアプト式導入路線だと、スイスのマッターホルン・ゴッタルド鉄道が有名でしょうか。あの「氷河急行」も走っている鉄道です。

・最初はSL、そして第3軌条電化へ。

苦心の果てに横川~軽井沢間が開業した当初は、アプト式に対応した専用の蒸気機関車が牽引していました。が、トンネルが連続する碓氷線においては、煤煙がトンネル内で充満し、機関士が死傷するほど危険と隣り合わせな現場でした。
結局10年ほどで電化され、電気機関車による牽引にシフトしていきますが、この時採用された電化方式は、一般的な、屋根の上に電線を張りパンタグラフで集電する「架線式」ではなく、丸の内線など、一部の地下鉄で採用されてる、線路の横に集電用のレールを張る「第三軌条式」で敷設されました。理由は簡単。トンネルが蒸気機関車時代でギリギリ通れるほどの小さいものなので、普通に架線で電化するには狭くて出来なかったのです。
電化アプト式時代の電気機関車は当初は小型の10000形(EC40形)やED40形で運用されていましたが、最終的に決定版となったのが、現在も鉄道文化むらで保存されており、劇中でもエンディングに登場しているED42形。最大の輸送力では軽井沢方に1台、横川方に3台連結した機関車4台による編成で日々峠越えを行っていました。
ちなみに先述の10000形は軽井沢駅に、ED40形は大宮の鉄道博物館に保存されています

アプト式の終焉

戦後、高度経済成長の時代になり、特急も通るようになった信越本線。輸送需要が増えつつあることから、碓氷越えの区間も輸送力増強が求められ、大規模な路線改良が行われる事になりました。
まず現在のルートにほぼ平行した場所にもう1線線路を敷設。こちらに本線機能を移した後に、旧ルートも改築および新線付け替えを行い、実質複線化するというもの。この改良工事により碓氷越えは一般的な鉄道と同じ「粘着式」に切り替えられ、アプト式自体が廃止されました。電化方式も普通の架線式へと変更されました。劇中で度々シンやアブトが通ったトンネルや碓氷第三橋梁は、改築されず廃止となった横川~旧熊ノ平間の旧線区間にあった、アプト時代の遺構を遊歩道として転用したものなのです。
リニューアルした碓氷越えの新たな峠越え機関車として投入されたのが、アブトの自室のポスターにも描かれていた、EF63形。2台1組を基本とし、列車の横川方に連結して後押し役とブレーキ役に…というのは第1話の「鉄道ポイント」の時に説明しましたね。
また、連結する電車も、189系や169系など、碓氷越えに対応すべくEF63と強調できる機能が備わった車両が登場し、それまで碓氷越えの間は動力は機関車任せだった電車も、電車の持つ動力と機関車の持つ動力で碓氷峠を越えるようになりました。協調運転に対応してない車両もブレーキ系統が強化されており、実質ここを越える電車は専用の装備を備えないと通れない…という制約が課せられていました。

・碓氷越えは在来線から新幹線へ。そして…

そして1997年、長野新幹線(北陸新幹線)の開業を以て碓氷越え区間は廃止となり、EF63はお役御免となりました。
廃止後、EF63の基地だった横川運転区は再整備され、碓氷峠鉄道文化むらとしてオープンし、EF63は7台がここに保存され、うち4台は運転体験用として今も稼働しています。運転体験は実際に講習を受け、試験に受かって初めて運転体験ができるというかなり本格的なもの。体験を50回超えた者には、更なる高度なテクニックが求められる運転体験も可能になるという、一種のランカー制度もあります。
そうして今に至る…訳ですが、碓氷越えが完全になくなった訳ではありません。北陸新幹線はかつての碓氷峠を迂回するようなルートで建設され、勾配も碓氷越えルートの半分に抑えられていますが、それでも急勾配が約30キロにわたって続く構造のため、ここを通る新幹線車両もやはりブレーキ系統を強化する必要が出るのです。そのため、北陸新幹線を通る車両は開業時から限定されており、2021年現在、ここを通る新幹線はE7系W7系と、北陸新幹線の検測を担うE926形「East i」のみとなっています。
そして実は、碓氷越え区間自体は、線路設備がまだ丸々残っています。廃止後、線路自体の殆どは撤去されず、再整備して観光用として横川~軽井沢間を復活させる事も可能な状態にできるよう維持・管理されているのです。最近は普段は立ち入り禁止のこの区間をウォーキングするイベントも行われています。
更にその一部は、鉄道文化むらの施設の一部として、旧丸山変電所から少し先にある温泉施設「峠の湯」へと繋がるトロッコ列車も運行されています。かつては下り線として使っており、また先述の運転体験の線路と共用している区間を実際に列車に乗って辿ることが出来ます。終点の「とうげのゆ駅」は本線から分岐して新設された駅。分岐の先は車止めで封鎖されているのを除けば、いまでも列車が走ってきそうな雰囲気です。
碓氷峠の鉄道は、形を変えつつも、令和のこの時代においても健在なのです。

 

・第4の「Z」現る!

オンボノヤスカモを倒したのもつかの間、今度は西鉄太宰府駅付近で巨大怪物体が出現。ヴァルトムが別行動をとっていたのです。ほんと、キトラルザスと違いテオティは容赦ない…
しかしその時!4機目のシンカリオンZが現場に駆け付ける…という所で次回へ!
次回、「流れ星」にもなった21世紀の新幹線と、平成初期生まれのワンダーランド・エクスプレスが夢の合体!