小田セン。

好きなものは、好きなままでいられるように。

新幹線変形ロボ シンカリオンZ 第10話「大空中戦!波乱のZ合体!!」感想&解説 ~互いに認め合えるもの~

大宰府のZコードは解放した。

だがまだ、同じくそこにあるであろう結晶体も、テオティより先に見つけ出さねばならない。

という訳で暫くヤマカサの家に居合わせることに。

相変わらずシンは、ヤマカサとのソツの悪さから不満気だったが…

 

・良きチームメイトである為には

 明星アケノから鷹匠の取材を受けていたヤマカサ。ここでも改めて、自分とアルバートはお互いに理解し合える対等な関係である相棒であると語る。そして大事なのは、相棒と一心同体になる事。それを聞いてシンはアルバートに800つばめのビジョンを重ねる。
そこでシンも少しでもヤマカサに歩み寄ろうと、雷雲が立ち込めた空模様に因んで菅原道真の雷神伝説を語るのだが、相変わらずヤマカサは、友達である為には互いに認め合えるものが無くてはならないと踏まえた上で、非科学的な事しか考えられないシンとは認められないと一蹴する。アブトもこれには、色々な所から集まったこのチームで個性が違うのは当然だと反論。
頑なに平行線な二人の間柄。そこでハナビは、対等にわかり合うには、その気になれば俺にもできる。というのを見せつければ良いと、シンのおきゅうと嫌いを克服する作戦を提案する。が、様々な味付けを試すものの、口に入れる事すらままならず…
明朝、シンはアブトに連れられて、朝早くからランニングに励むヤマカサの姿を見せられる。毎日、雨が降ろうとも毎日欠かさず行い、そしてその後は父のおきゅうと工場の手伝い。すべては世界一のおきゅうと職人になる為。
皆、様々な事情を抱えながらシンカリオンの運転士もやっている。そして皆、そのシンカリオンを通じて繋がっているのを忘れるなとアブトはシンに告げ、そしてシンもまた、おきゅうとを口にし、おきゅうと嫌いを克服するのであった。結局食わず嫌いなだけだったようだが…その様子をずっと見ていたヤマカサも、オカルト否定には変わりないが、「この目で確かめない限りはな」と少し歩み寄ってきたのであった。

…理念が正反対な間柄では、そう簡単にわかり合えるのは難しいものです。だからこそ、ふとしたきっかけが必要になる。シンは、ひたむきに夢にむかって努力しているヤマカサの姿を見て、そしてヤマカサは、食わず嫌いなおきゅうとを食べようとするシンを見て、互いに「本気」を見せ合った訳です。そして案外、そうしたことが、わかり合える糸口になるもので…

・認められないモノ、認め合えるモノ。

雨も上がり、結晶体探しに向かう一行。歴史的に大宰府と深い関わりがあると言われる宝満山にそれはあるとアブトは踏んでいた。その予感は的中。その場にヴァルトムが先行しており、早速巨大怪物体を5体も召喚する。
シン達もシンカリオンで出撃。数では不利な戦況も、見事な連携で戦力差をカバーしていく。ところが、800つばめが飛行型の敵に捕まり、捕縛フィールド外の雷雲に連れて行かれてしまった。ヤマカサを救援しなければ…と、ふとシンは、E5と883ソニックをZ合体すれば自身も空へ行けるのでは?と提案。アブトもその手があったか!と快諾。イレギュラーなZ合体だが、可能性はゼロじゃない!と信じ、E5ソニックへZ合体し空へ向かう。
ぶっつけ本番の空中戦な上に、飛行能力が脚部のソニックジェットに依存し、そして元々滑空程度の推力しかないE5の背部スラスター。そんな推力のアンバランスさに苦戦するシンだったが、ヤマカサのアドバイスでどうにか姿勢を制御する事に成功。しかし敵の方が機動力が高い。一体どうすれば…
とその時、ヤマカサは突然「一反木綿を見た」と言い出す。そしてそれは、E5だと。E5が雲海の中を高速で移動する事で、E5のヘッドライトが一反木綿の正体と言われている陽性残像を引き起こす。それを利用する事で、敵をかく乱する事に成功。
「シン!僕たちの強さを証明しよう!」敵の動きが止まった瞬間を突くように、800つばめはE5からエネルギーを自身から発する架線を通じてチャージし、最大出力のソニックパンタグラフボウガンを打ち出して敵を撃破。地上の敵も、E6とE7ですべて撃退した。
戦いのあと、シンとヤマカサは、「シンカリオンの運転士」として、互いに認め合うのだった。別におきゅうとが食べれなくても、世界の謎に興味が無くても…

…「個性」は尊重しつつも、「シンカリオン」という一つのチームの一員として互いに協力する。
認められないモノはそれぞれある。けど、互いに認め合えるものはある。そういう落とし所でしたね。
でもそもそもシンカリオンって、「個性」がそのままシンカリオンの性能に直結するので、それを曲げてしまうのはどうしてもナンセンスなんですよね。なんで主要スタッフが大きく変わった「Z」でもその辺は前作の「好き」から少し形を変えつつも堅持し続けているのは良かったですね。
玩具オリジナルかと思ってた変則Z合体が見れたのもまた。いちいちバンクを用意しなきゃいけないという手間はあれど、今後もそういうのは見たいですね。それこそ腕脚両方の2重Z合体も…

・今回の鉄道ポイント:SLは「生き物」

早朝からランニングに励み、力強くペースの乱れない走りをするヤマカサの姿を、アブトは煙を吐き出しながら走る蒸気機関車になぞらえてました。
古典的な表現として、人が力強く走ったりする様は度々「汽車のよう」と表現する事があります。うおォン俺は人間…いやこれは火力発電所ですけど、まぁそんな感じの。
そうした表現が出るのは、蒸気機関車、またの名をSLもまた、人間と同じく「煙」という名の「息」を吐くからなのでしょう。や、ディーゼルもそうなんですが、こっちはあまり言われない辺り、SLの時代の自伝で普遍的な表現だったんでしょうね。

そんなSLは、時に「生き物のようだ」と言われる事があります。
当然ながらSLは人工物。金属で作られたの「機械」です。それが何故生き物のようだと形容されるのか。それはSL自体が、まるで生き物のように、「気まぐれ」な存在だったからです。

SLは石炭を燃やし、その熱で水を温め、そこから出た蒸気を圧縮し、その力でピストンを動かし、ロッドを通じて動輪に伝達する事で動く…という、アナログ100%な機械なんですが、実は石炭による蒸気機関は熱効率が悪いうえ、燃焼して発生する蒸気も、その日の天候や季節によって変わっていきます。そのため、いつの日でもどの運用でも、SLが動かせるよう一定の蒸気を発生し続けるには、石炭をくべる量、燃焼を補助する重油を噴射するタイミングを、常に現在の状況を見ながら変えていく…という非常に高度なテクニックが要求されます。
おまけに、そうした「癖」は、同じ形式のSLでも機体によって全然異なっており、ある機関区では、すべてのSLがそれぞれ「使い勝手」が異なる。なんて逸話もありました。
人が造り出した「機械」でありながら、繊細な扱いをしなければならず、そして個性が備わっているという点では、まさにSLは「生き物」。SLはさしずめ「鋼鉄の馬」であり、競走馬がそうであるように、SLという馬と、機関士というジョッキーが一心同体となって初めて走る事が出来るのです。

…と言うと、それこそ一心同体になる事が大事とするヤマカサとアルバートとの関係、ひいてはシンカリオンの運転士としての絆、そして以前島整備長が言っていた「鉄道は運転士と整備士、どちらもいないと成り立たない」に通ずるのではないでしょうか…という所で今回はお開きといたしましょう。

 

次なる舞台は、名古屋にあるリニア・鉄道館。
その地下にある名古屋支部でも、懐かしい顔ぶれが…!
次回、シンカリオンZは1機なのに、運転士は2人?