小田セン。

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新幹線変形ロボ シンカリオンZ 第11話「初陣!シンカリオンZ N700Sのぞみ」第12話「秘技!デュアル・グランパス・システム」感想&解説 ~兄と弟とジェネレーションと~

アブトが新たに見た夢にあったのは、名古屋城

となれば次のZコードの鍵は名古屋にと新生大宮組は今度は一路名古屋へ。

一方で、超進化研究所名古屋支部では、新たなシンカリオンの候補生が最終試験を受けていた。

候補生はふたりの兄弟。果たして運転士になるのは…

 

・空手兄弟Z世代

シン達が訪れたのは、名古屋・金城ふ頭にある、東海道新幹線の歴代車両が一堂に会す「リニア・鉄道館」。そしてその地下に、超進化研究所名古屋支部を構えている。そしてそこではつい先ほど、「シンカリオンZ N700Sのぞみ」の運転士を選出する最終試験を終えたばかりであった。
候補生は安城シマカゼと、その弟、安城ナガラの2人。2人とも空手道場のトップクラスであるが、シマカゼは寸止め等のような伝統的なスタイルを主とする伝統派、ナガラは格闘技のように直接打撃を行うフルコンタクト空手と、戦いのスタイルに違いがある。これはナガラが、どうしても兄に勝つにはどうしても起こり得る体格差のハンディを埋めるためにフルコンタクトに転向したからであった。
そんな2人を指導長代理として選抜、訓練を行わせていたのが、かつて名古屋支部所属のシンカリオン運転士であった、清州リュウジ。テオティ襲来の報を受け、再び研究所に戻り訓練を行ったのだが、かつてほど適合率が上がらず、新たな運転士を探す必要が出た。そこで自身の通う空手道場の後輩である2人に白羽の矢が立ったのだ。
そして最終試験はというと、2人とも適合率90%を超える数値をたたき出し、どちらも運転士に相応しいという結果になった。だがシマカゼは、自分より約1%高いナガラを運転士にすべきだと言い、運転士になる事を辞退してしまう。ナガラは兄に対し「手を抜いてるんじゃないのか?」と詰め寄り、今度は組み手で勝負してどちらが運転士に相応しいか決めたがるが、シマカゼは頑なに断るのであった。
ナガラを正式な運転士としてN700Sで初陣を飾った際も、シマカゼはナガラの戦闘を指令室からサポートしてナガラを勝利へ導いた。それだけ戦闘に対するノウハウを持っておりながら…

東海道組の新世代の運転士はまたしても兄弟という。しかもリュウジの空手の後輩というのは今回だいぶ前作からの流れが強いですね。
それにしてもリュウジ…やはり適合率が落ちてしまっていたんですね。大人だと運転できないという前提がある以上、やはり加齢がそうさせるのか、それとも長いブランクがそうさせたのか…ただ、リュウジは以前、将来は超進化研究所に携わりたいと言ってはいたので、こうして指導長代理として名古屋支部のスタッフとして活躍しているのはすごく解釈の一致ですね(
リュウジですらこれだと、前世代の殆どの運転士もまた適合率は落ちてるのでしょうね…でもただひとり、「彼」だけは、未だに落ちてないと思えてしまうんだよね…果たして。

 

・旧い世代は必要ない?

シマカゼは、大切にしてるN700Aのキーホルダーを片手に想いを馳せていた。幼い頃、父・シナノに連れられ、名古屋駅で新幹線を見ていた時に、父から「新幹線のように、兄として、ナガラの先をまっすぐに走っていけ」と当時最新鋭だったN700Aのキーホルダーをプレゼントされた事を。
しかし今のシマカゼには思うことがあった。先日、リニア・鉄道館に来ていた親子連れが、屋外に展示されてあったN700系に対し「これ古いの?」と言っていたのを見たのもあって、「新幹線もN700Sの時代になった…」と、まるで自分はもう旧い人間であるような素振りを見せる。
そんな兄に対し、ナガラは改めて組み手を申し込む。「拳による対話」として。リュウジの勧めもあり、シマカゼも渋々組み手に応じる。戦いのスタイルは違えど、互角の戦いをする2人。そして、ナガラの不意を突く形でシマカゼが一本をとり決着はついた。
それでもシマカゼは運転士にならないとキッパリ言った。だがそれは、技の精度が自身より高く、そして適合率も高いナガラを推すのとは別に、兄を追いかけるばかりのナガラに独り立ちをさせたいという思いもあったからだった。戦い方もそれぞれ違うようになったからこそ、それぞれ別の道へ進むべきだと。これにナガラは、兄に追いつき追い越したかったからこそ、ここまで来れたと返す。そしてナガラは運転士になる事を、シマカゼはそのサポートとして見守る事を、それぞれ決意したのであった。
そうした2人の一部始終を見ていたリュウジは、あるシステムをN700Sに組み込む。それは運転士に加えて、もう一人をサポートとして添乗する複座運転システム、「デュアル・グランパス・システム」だった。2人で一緒に乗れない事に驚くナガラに、シンが「新幹線も運転士と車掌が乗るからな」と言っていた事に着想を得て開発したシステムであり、さらに副次的に2人の適合率が乗算された事でN700Sの武装「イヌクギクロー」も使用可能になった。
運転士・ナガラの攻撃力に、車掌・シマカゼの戦術能力が補われる事によりN700Sは高い戦闘能力を発揮。圧倒的強さで敵を撃退するのであった。

…もうすっかり「旧い」車両なんですよね…N700系。廃車編成も出てますし。正直家族連れのくだりはものっそいジェネレーションギャップを感じましたね。
そうしたギャップがシマカゼの中にあったというのが今回のミソだったのでしょう。弟の前を進むだけでなく、弟を送り出すのも兄の務め。この辺は「兄の後を追う弟」という清洲兄弟の関係が描かれた無印54話の延長線上にある話でしたね。そういう意味でも、安城兄弟は清州兄弟を継ぐ存在だった訳ですね。「拳で語る」というのも無印の「言葉のない対話」に通ずる物があって良きですね。

 

・今回の鉄道ポイント:N700とかN700AとかN700Sとか

今回はN700SだったりN700AだったりN700だったりと、いろんな種類のN700が続々と出てきて「なるほど、わからん」ってなった方も多いと思います。
そこで、今回の鉄道ポイントは違いの判る、東海道系統のN700シリーズをご紹介。

・まずどう違うのか

700系の後継として誕生したN700系は、より空気抵抗を抑えるべく、高度な計算によって導き出された独特な先頭形状と、700系とは一線を画す、両脇に分散したヘッドライトが外見上の最大の特徴ですが、以後に登場したN700AもN700Sも基本はそのスタイルを踏襲しています。それ故にカン違いしやすいというのもあるのでしょう。ではそれらはすべて同じ「N700系という形式」かというと、実は違います。
というのも、N700AN700系のマイナーチェンジであり、N700系の一部なのですが、N700Sはというと、「標準車両」というコンセプトの元、機器配置が見直され編成両数の増減が容易になるなど、設計がN700系N700Aとは全く異なっており、一応「N700系とは別な形式」という事になっています。それ故、一部文献では「N700S系」と記されているものも。先頭形状も、それまでのN700系N700Aの「エアロダブルウイング」形状から、「デュアルスプリームウイング」へ進化し、よく見ると両サイドが従来より高く盛り上がり、ヘッドライトも大型化しているので、前頭部をよく凝らして見れば違いがよく判るかと思います。あとは青い帯の端部もそれまでと違うのも見分けるポイントですね。

N700系N700Aに、N700AもN700Sに

先述のように、N700AN700系のマイナーチェンジであり、主にブレーキ性能が強化され、更に定速走行が出来るようになったのが大きなポイントです。これで何が出来たのかと言うと、長らく270km/h止まりだった東海道新幹線の最高速度が、遂に285km/hまで引き上げる事が出来るようになった事。新幹線を速く走らせるには、その分緊急時に最高速度から一定の距離で止まれるようにする必要がある為です。
そしてN700Aの投入と並行して、従来のN700系に、N700Aと同等の性能に合わせる改造も行われるようになります。これは従来のN700系にもN700Aと同じ強化ブレーキや定速走行装置を導入することで車両運用の効率化が出来るから。現に、700系が引退し、東海道新幹線の全列車がN700シリーズに統一された2020年春のダイヤ改正では、それまで「のぞみ」にのみ適用していた285km/h運転が、「ひかり」「こだま」も含めた全列車に適用されるようになりました。
改造されたN700系には、元からあったN700ロゴに小さくAの文字が追加されており、N700Aが大きいAをあしらったロゴである事から「スモールA」とファンからは呼ばれています。シマカゼが「N700Aの機能を採り入れた改造車両」と紹介してたのはこの事を指すのです。そのスモールAも、N700Sの登場で順次撤退、廃車されています。編成数がかなり多く、導入ペースもゆっくりなので完全に引退するのはまだ先ですが、記録はお早めに。
そして更に、N700S導入後も残るN700Aもまた、N700Sの走行性能に合わせる改造が施される予定になっています。東海道新幹線は、そうしたサイクルの歴史でもあるのです。

・特殊な存在、Z0→X0編成

0系、100系300系、700系と、歴代の東海道新幹線の車両が一堂に会するリニア・鉄道館。そんなリニ鉄に、2019年、N700系も仲間に加わりました。
劇中にも描かれたように、屋外に3両が展示されているN700系は、最初に製造されたN700系であり、最初に引退したN700系でもありました。
東海道新幹線では伝統として、新しく設計した車両を、量産する前に各種試験を行いデータを取得する為に1編成先んじて製造される「量産先行車」に、「9000番台」という番台区分と、「0」の編成番号が与えられます。
実はリニ鉄に展示されている300系と700系もその量産先行車・9000番台であり、300系は「J0」、700系は「C0」という編成番号が与えられていました。そして新たに展示車両に加わったN700系もまた、9000番台であり、編成番号も「Z0」でした。
ところが、その後300系・700系は量産車と同じ設備に改造され「J1編成」「C1編成」と番号が変わり量産車と一緒に営業運転を行うようになったのに対し、N700系はそのような改造は行われず、営業運転にも就きませんでした。その理由は量産車で客室設計が大幅に変わってしまい、Z0編成に追加改造で量産車と揃えるのは難しくなってしまったからです。
こうして営業運転が出来なくなってしまったZ0編成ですが、代わりに別の役目が与えられました。それは新技術の試験のプラットフォーム。新幹線の技術は日進月歩であり、研究の成果を詰め込んだ車両が登場しても、そこから更なる進化を求めて研究は続きます。その試験車両としてZ0編成は非常に最適だったのです。というのもZ0編成が登場するまでは先述の300系J1編成が試験の時にだけ借り出されるという形だったので。
そうしてZ編成は新技術の研究の為に、日々試運転を繰り返していきました。これを駅で見つけたら隠れたレア車だった事でしょう。N700Aの導入で行われた「スモールA」化も量産車同様に施され、編成記号もZからXに代わり「X0編成」になりました。
そして2019年、N700Sの量産先行車ポジションである確認試験車・J0編成が登場。J0編成はX0編成がこれまで担ってきた新技術のプラットフォームを最初から担う役割を持っており、それは即ちX0編成が遂にお役御免になる事を意味していました。
こうしてX0編成は一度も客を乗せる事無く引退し、3両がリニ鉄に移され現在に至ります。しかし、リニ鉄では常時客室を開放しており、誕生から19年の時を経て、初めて客を乗せる事が出来た…と思うと、なんともエモい話ではありますね。

・つまりはどういう事だってばよ

結論としては、東海道N700シリーズというのはこう見分けられるという事です。

・最古参であり側面ロゴに小さいAが付いているのがN700系(順次廃車予定)
・側面のロゴかデカいAをあしらったものなのがN700A(更新改造予定)
・前頭部がちょっと違い側面ロゴも金色なのがN700S(順次製造中)
・リニ鉄に保存されてるN700系X0編成と最新鋭N700SのJ0編成は営業運転に回されない確認試験車

なかなか違いがわかりづらいN700シリーズですが、これで少しは分かることが出来れば幸いです。

 

・動き出す謎、四たび暗躍するアイツ

さて、当初の目的であるZコード探しはと言うと、名古屋城に加えて、旧い字体の東京駅や名古屋駅駅名標が新たにアブトの夢で見た事から、安城兄弟が博物館明治村だろうと断定。ここには明治期のSLが動態保存されており、保存線の駅には先述の駅名標があるのです。そして見事めがね橋でZコードを発見するのですが…その途上、アブトは写真館に展示してあった家族写真を見て自分の家族がフラッシュバックしたその瞬間、再び夢を見るようになり、そして先述のめがね橋の先で、停車する闇の新幹線と、それに乗り込む父の姿が…その闇の新幹線に乗り込むべきか迷った時に目を覚ましましたが、これまでのアブトの見た夢から察するに、やはり、父がアブトを「誘ってる」というフシの方が強くなってきましたね…

そして、今回現れた敵は2回とも、かつてキトラルザスが使役しシンカリオンと対峙した巨大生物「クレアツルス」の一種。それを操っていたのは、キトラルザス戦でも、キリン戦でも、そしてヴァルハラン侵攻でも単身暗躍していたソウギョク!またお前か!
やはりまたソウギョクがテオティ襲来の張本人なのか、それともテオティの野望にソウギョクも1枚噛むつもりなのか…ソウギョクの依頼主?とおぼしき謎の女性幹部も気になりますね…

1クール目も終わり、遂に物語も次のステージへ進みそうなシンカリオンZ。その先に見えるのは何があるのか…てかその流れでボイメン辻本さんとか500キティとか出る訳だよね?想像つかねぇ!(