小田セン。

好きなものは、好きなままでいられるように。

新幹線変形ロボ シンカリオンZ 第3話「ぶち抜け!VVVFブラスター!!」感想&解説 ~謎だけど動くからヨシ!~

ある夜、アブトは夢を見た。

横川支部から帰路につく時、フードを被った男とすれ違う。アブトは「父さん!」と叫びながら追いかけるが、気づいたら何故か盛岡駅にいて、そして謎の強面の新幹線に追いかけられたところで目を覚ます…

だが、その夢は「Zコード」の手がかりでもあった。

アブトとシンは、Zコードを探しに、一路盛岡へ!

・なんでそうなってるのか分からないけど、動くからヨシ!

Z合体の際に用いられるZコード。それはアブトが開発した…という訳でなく、スマットのQRコード好きと同様、何故かそういう仕様になってしまったのだという。
そしてそのZコードは全国に散らばっており、Zギアで読み込むことで、対象のザイライナー閉塞が解除、いうなれば「解放」され、Z合体が可能になる。
盛岡で一番高いビル、マリオスの展望台からサーチすると複数の反応が。その殆どは「ハズレ」であり、太田薬師の境内にある霊石に記されていたコードでようやくザイライナーE259が解放された。

…なかなか謎なシステムだったんですね、ザイライナー。
や、シンカリオン自体も「適合率」という未だに全容が判り切ってないパラメーターがありますので、今に始まった訳じゃないですがね。
新幹線は徹底した「技術の裏付け」がないと動かせないものなので、システムの全容が解明してないシステムで運用されるシンカリオンって意外と現場猫案件ありますね(

そして今作では、オカルト好きのシンの存在と、Zコードが神社の境内に記されていたのも相まって、Zコードという存在自体がそれこそ古代の遺産的な要素を孕んでいますね。古代の…というと、オネエ口調なのが意外だったヴァルトムが、地面に頭突きをすることで召喚したのを見ると、テオティが繰り出す巨大怪物体も、今回でどうも「土地」が関係しているようなフシが。果たして。

ちなみにZコードを見つけた太田薬師、あそこ境内までは高尾山と同じくらいの登山コースのようで…前回の廃線跡も6キロは走ってたようですし、ほんとアブトもシンも体力ありすぎてヤバイわ…(

・ZのE6はロックでド派手

シンのオカルト由来知識から「ブラックドッグ」と名付けられた巨大怪物体を撃退すべく、盛岡の車庫に搬入しておいていたE5で出撃するも、不意打ちと俊敏さに苦戦する。
だがその時、大曲ハナビが駆るシンカリオンZE6こまちが駆けつける!
2丁拳銃VVVFブラスターで見事に足止めをするも、ヴァルトムの介入により捕縛フィールド内に多数の岩山が形成され、囲まれる。ジャンプして飛び出そうものなら、敵に攻撃されてまた岩山の壁に押し戻される…これを打破すべく、E6とE259がZ合体し、E6ネックスとなり強力な砲撃で岩山の壁を破壊するが、たちまり元に戻されてしまった。
そこでシンは飛び出して攻撃されるのを逆に利用し、敵を捕まえ、E6の射程圏内に抑え込む。だがそのままではシンのE5にもダメージが行く。これでは…と思いきや、アブトはシンが以前言ってた事から一計を案じる。それはネックスVVVFブラスターの着弾の直前にE5だけを転送させる事。これによりブラックドッグだけを見事に撃破するのだった。

…転送システムによる緊急離脱は前作でも度々やってきた戦法ですね。シンにとってはシンカリオンにはまだまだ知らない事が沢山ある。という所から、アブトは転送システムがあるのを思い出したんですな。やはり地続きの世界観なんだなって。

そして今回初登場のシンカリオンZ E6こまち。以前のE6では運転士・男鹿アキタのバトルスタイルもあって、狙撃を得意とする「スナイパー」な印象がありましたが、今回の運転士の大曲ハナビは、ロックでド派手な性格から、早打ちや乱れ撃ちを得意とする「ガンマン」な印象がしましたね。アレですね、ガンダム00のニールとライルみたいな感じの(

合体するザイライナーは、E259ネックス。E235ヤマノテが腕担当なのに対し、E259は脚担当。脚部換装パーツというのは設定の作り分けが難しいパーツではあるのですが、E259の場合は砲撃時のアンカーを担っているようですな。先日発表された883ソニックでは飛行用のスラスターが付いているので、案外その辺は巧く考えてそうですね。
そしてネックスVVVFブラスターの軌跡がE239系のオーラを作り、そしてロゴマークにもある飛行機のシルエットでフィニッシュというのもカッコイイ。800つばめのパンタグラフアローもそうでしたが、ロゴマークの一部が必殺エフェクトになるの大好きです。…E259でダイレクトアタックにしなかったのは、新小岩辺りをイメージしてしまうから避けたのかな…(などと

・今回の鉄道ポイント:N'EXと閉塞とVVVF

・「N’EX」と呼んでくれ

さて、そのE259ネックスの元となったE259系は、前回も触れてましたが、直流電化区間専用車両。盛岡周辺は交流電化区間なので、実車は自走なんか出来やしません。
そんなE259系が本来走る列車は、首都圏各地から総武本線成田線を経由して成田空港へと向かう空港アクセス特急成田エクスプレス」。なので、盛岡の車両センターの片隅にいたのには流石のシンも違和感を感じたはずです。
E259系はその2代目車両であり、6両編成を2つ連結する事が可能。これにより、成田空港から東京までは連結し、そこから一方は横浜方面、もう一方は新宿方面へと向かう…と言った感じに、要は「はやぶさ・こまち」のような運行が可能なのです。
…が、2021年5月現在、コロナ禍で海外への航空需要が激減した影響により、日中の列車は軒並み運休という状態が続いており、多くのE259系が所属基地である鎌倉総合車両センターで暇を弄んでいるのが現状な、不運な列車でもあります。
そんな成田エクスプレスは、「N'EX」と書いて「ネックス」と呼ぶ公式略称があります。訪日外国人を意識した略称だとか。というか成田エクスプレスという愛称自体がかなり安直で逆に珍しくもありますよね。
かつては「ヒカリアン」でも先代N'EXである253系が「ファイヤーネックス」と呼ばれてたように(成田ボンバーェ…)、古くからの鉄道ロボ好きにもなじみの深かった「N’EX実車がコロナ禍で活躍出来ない分、シンカリオンZで大いに活躍してほしいものですね。

・「閉塞」が「解除」されるという事

そんなE259ネックスは、Zコードを読み込むことで「閉塞が解除」され、Z合体できるようになりました。…「閉塞解除」って? と思った諸兄も多い事でしょう。
閉塞解除とは、一言で言うなら「列車を通せるようになる」という事。
在来線の多くは、駅と駅の間というのは、実は一定の間隔で区切られており、「閉塞区間」と呼ばれます。
電車は急には止まれません。新幹線でもフルスピードから非常ブレーキをかけて停止するまでには約4000メートル、品川から浜松町のちょい先までの距離がかかります。そうなると、急停止しても先行する列車にぶつからないように、もしくは急停止して後続の列車が追突しないよう、車間距離を自動車よりも広くする必要が出ますよね?
そこで考え出されたのが、「閉塞」という概念。1つの区間には原則1つの列車しか通せない。というルールを設ける事で、万が一の際に衝突・追突が起こらないようにするのです。よく運転士が「第1閉塞、進行!」と指差喚呼するのを見たことがある人もいるでしょうか。アレはつまり、それぞれの閉塞区間の入り口に信号機が立っており、その信号の指示によって列車を通せるかどうか…というのをチェックしている訳です。仮にその信号が赤を示しているのなら、その先の区間で列車が停まっているという事。ならこちらも安全のため速度を落として…といった行動に移れるのです。
…つまり「ザイライナーの閉塞解除」というのは、ザイライナーが「Z合体」という「区間」を通れるようになる。という事なのでしょうな。
なお、新幹線や一部の在来線は閉塞という概念がなく、まったく違うシステムによって車間の安全性が確保されています。それついては機会があれば、いつか…

・「VVVF」は何を意味するのか

シンカリオンZ E6こまちの標準武装である、VVVFブラスター。電車の床下に吊り下げられている「VVVFインバータ」を収めた箱をモチーフにしたデザインなのでしょう。
「スリーブイエフ」と一部のマニアは読みそうですが、劇中では「ブイブイブイエフ」と直読みです。現場でもこっちの読み方らしい?
そもそもVVVFとは、「Variable Voltage Variable Frequency」の略であり、直訳すると「可変電圧可変周波数」。つまり電圧と周波数を変える為の装置がVVVFインバータなのです。
前回の鉄道ポイントで、日本の鉄道には複数の電力が存在するとは言いましたが、そのまま直流1500Vや交流20000Vで直接モーターを動かす訳ではなく、実際は複数の制御装置により、電圧を下げたり、直流を交流、もしくは逆に変換したり、位相や周波数を変えたりした上でモーターに電気を流し、動かします。
VVVFインバータはその制御装置のひとつであり、三相誘導電動機という、ハイパワーかつ軽量でメンテナンスも容易なモーターの回転、つまり速度の制御に直結する重要な役割を担っています。また、減速時にモーターを発電機として使い、生じた電力を架線に戻して他の電車の加速に使うことが出来る「電力回生ブレーキ」の機能も備わっています。ブラックシンカリオンオーガの「カイセイサンダー」はこれが由来なのです…!

そしてVVVFといえば有名なのが、かつて京急の車両に搭載されていた、通称「ドレミファインバータ」。これはどこから出る音かというと、加速時、VVVFインバータによって電圧や周波数が変化する際のノイズがモーターから発せられる「磁励音」と呼ばれるもの。
GTOサイリスタと呼ばれる半導体素子を使用した80~90年代生まれのVVVFインバータ制御車両は、どうしても磁励音がやかましくなってしまう問題点があった(マニア的にはそれもまた魅力だったが…)のですが、ドイツのシーメンス社製のGTO-VVVFは、その磁励音を意図的にメロディーっぽくなるように調整したのです。
結果、シーメンス社製VVVFを搭載した京急2100形新1000形、そしてJR東日本E501系は、その独特なメロディー磁励音でたちまち人気者となっていきました。…のも今は昔。2021年5月現在、2100形とE501系は全て国内メーカーのIGBT素子VVVFに換装され、新1000形シーメンス製が残るのは1編成のみ。「歌う電車」も過去の遺物となりつつあります。
とはいえ、比較的大人しくなった現在のVVVFもまた、メーカーによって磁励音に特徴があり、マニアの興味は尽きません。
そして今や国内で稼働している電車の7割がVVVFインバータ制御車。VVVFはもはや日常となりつつあるのです…!

 

シンよりも多く訓練はしていたものの、出撃は初だった大曲ハナビ。
唐突な登場だった彼の素性は、次回のお話で…