小田セン。

好きなものは、好きなままでいられるように。

新幹線変形ロボ シンカリオンZ 第9話「翔けろ!シンカリオンZ 800ソニック」感想&解説 ~科学vsオカルト~

大宰府に敵が現れたという事は、そこにZコードもある筈。

という事で新生大宮組は一路九州へ。

こちらも懐かしの門司支部では、「シンカリオンZ 800つばめ」の運転士、中洲ヤマカサが出迎えてくれた。

ところが、彼とシンの間に、妙な張り合いが生まれて…?

 

・パーフェクトヒューマン、中洲ヤマカサ

 かつては九州の玄関口でもあった港駅。その隣にある九州鉄道記念館の地下に、超進化研究所の門司支部はある。前身と同様に飛行能力を持つ「シンカリオンZ 800つばめ」の運転士として門司支部に所属する中洲川端ヤマカサは、福岡名産であるエキュートおきゅうと工場の跡取りでもあり、いずれは世界一のおきゅうと屋になる事を夢見ていた。
一方で、鷹のアルバートを相棒に持つ鷹匠であり、コンクールに入賞する実力もある。更に書道、英語スピーチ、陸上競技などなど、様々な武芸やスポーツにも秀でた、まさに秀才といえる能力を持っていた。全ては跡取りとして恥ずかしくないようにする為だという。オマケにアブトとタメ張れるほどに九州の鉄道の知識も深い。まさに完璧、パーフェクトヒューマンだ。
が、そんなヤマカサとどうにも相容れない者がひとり。新多シンだ。ヤマカサのただならぬ熱意に応えるかのように、シンもアツくオカルト知識をひけらかすのだが、ヤマカサは科学的に解明できてる幻だと一蹴する。妖怪はいるという主張も、そんなものはいないとばっさり否定するヤマカサに、シンは対抗心を持ってしまう。

…おきゅうと屋の息子がシンカリオンの運転士?と最初は思ったのですが、蓋を開けてみれば、むしろ前作における理論派のリュウジや地元愛が強いミクのようなポジションでしたね。そしてこの世のすべては科学で解明できるという、シンとは真逆の信念。まさかこんなアプローチで衝突するとは思わなんだなという思いです。それで芽生えるのが対抗心というのもシンらしいっちゃらしいですが。
キャラ的には、まるでガリレオシリーズ」の湯川教授みたいな感じでしたしね。クモハ・・・クモハ・・・フッハハ
おきゅうと屋を目指す事には変わらないというのは、むしろ頭文字Dの高橋涼介やプリチャンの赤城あんなを思い起こしましたが。

・敵を知り己を知れば百戦危うからず

太宰府政庁跡でZコードを探すなか、サッカー日本代表のエンブレムにもなっている神獣・八咫烏がモチーフの巨大怪物体が現れ、シン達4人は出撃する。ヤマカサへの対抗心からか、自分の手で倒そうと突出するが返り討ちに。これにはハナビも「一人で突っ走ってるんじゃねーよ!」と言い放つ。だが、敵はこちらの攻撃を吸収し、そして自身のエネルギーに変換して攻撃できる特性を持っていた。そして翼から発する炎の羽根により捕縛フィールド内が炎上し、またしても崩壊の危機に瀕する事態に。まさに太陽神と呼ばれるだけはある。
そんな中、ヤマカサはひとり、危機的な事態においても状況を分析していた。そして導くべき結論を見出したその時、アブトも政庁跡そのものがZコードである事を突き止め、ザイライナー883ソニックを開放。「最高のタイミングだ!」とすぐさま「シンカリオンZ 800ソニック」へZ合体した。
敵の能力を分析せずにやみくもにぶつかるなどナンセンスだ!とシンに一括浴びせたところで、脚部にもブースターが追加された事で飛行能力が強化された800ソニックは、驚異的な飛行速度で敵より先回りし、ソニックパンタグラフボーガンで胸の吸収点を集中して攻撃する。吸収されるだけだ!と言うシンに対し、大量に吸収させれば吸収したエネルギーを制御しきれずに暴発するとヤマカサ。その読み通り、敵は暴発して自壊するのだった。

…ヤマカサの分析を元に導かれた結論。それを成すには、敵を先回りして迎撃できる機動力と、エネルギーを敢えて吸収させる為の飛び道具が必要だった。そのための800ソニックだったんですな。
こうした敵の分析は、前作は優秀なオペレーター陣のアシストがバックにいたので万全でしたが、今作は、それも横川時代はほぼシンのオカルト知識任せでしたからねぇ…そんな中に「適格な分析力」を持つヤマカサの介入は、オカルト知識で敵の攻撃手段は分かっても、敵を倒すにはどうするかという所までには至れない難点がより浮彫りになった格好ですね。
そして敵を倒す為に何が必要かという所まで分析していたヤマカサ。戦術予測までパーフェクトでしたね…

・今回の鉄道ポイント:個性豊かな九州の列車たち

アブトが883系ソニックに魅了し、そしてヤマカサも他にも沢山あると触れていたように、九州の鉄道は個性的な列車が数多く走っている地でもあります。
このようになったのは、JR発足時、本州3社に比べ経営基盤に乏しいJR九州があの手この手で集客アップ策を施した事によるもので、工業デザイナー、水戸岡鋭治による独特な車両デザインに、D&S列車と呼ばれる、「乗る事そのものを楽しむ」をコンセプトにした新たな概念の観光列車など、他JRとは一線を画した特徴を持っています。
そこで今回は劇中でも取り上げた個性的な列車たちをご紹介。

883系ソニック

特急「ソニック」は、博多から小倉を経由して大分・佐伯を結び、新幹線のない東九州の大動脈を担っています。使用車両は「白いソニック」とも呼ばれる6両編成の885系と、ザイライナー883のモデルでもある、東九州の海をイメージしたブルーメタリックに彩られた7両編成の883系の2種類で運行されています。共に「振り子装置」と呼ばれる、カーブに差し掛かる際に車両を傾ける事で、カーブでも乗り心地を維持したまま高速走行が可能な機構を搭載しているのも特徴です。
883系はデビューしたのが1995年ともう25年前の事であり、下手すりゃお父さん世代の車両でもあるので、ザイライナーのモチーフに選ばれた際は驚きましたね…!そんな昔の車両なのに古さを感じさせないのは、ひとえに水戸岡氏の先進的なデザインの賜物でしょう。
登場時は水色とステンレスシルバーを基調とし、内装もポップなカラーリングを採り入れ、「ワンダーランド・エクスプレス」の2つ名で、JR化後も国鉄臭かった日豊本線に新たな風を送り込んだデザインでした。その後、経年劣化に伴う更新工事の際に、現在のシックかつクールな装いになり現在に至ります。
ちなみに一部の編成は、4号車と5号車が後輩である885系の車体・内装に準じた車両が連結されています。これは当初は5両編成だったものの、乗客増に伴う運用の効率化を図って、883系全編成を7両編成にするための措置でした。車体が丸々違うので、見分けは容易な珍編成なのです。

・キハ47形「或る列車

九州最初の鉄道である「九州鉄道」が輸入した豪華客車。しかしその前後に国有化され、「看板列車」という本来の用途で使われずじまいに終わったという伝説の客車は、鉄道ファンから「或る列車」と呼ばれ、後世に語り継がれる程でした。
その「或る列車」のイメージを現代に蘇らせたのがこの列車。客車からディーゼルカーになったものの、その豪華さは当時の豪華客車そのもので、極上のスイーツを提供する美食列車として九州じゅうを駆け巡っています。

キハ71系ゆふいんの森

博多から久大本線を経由して温泉地である由布院や別府へ向かう観光特急で、JR九州のD&S列車の中で最も歴史が長い列車です。使用車両は劇中にも出ている4両編成のキハ71系ゆふいんの森Ⅰ世」と、5両編成のキハ72系ゆふいんの森Ⅲ世」の2本体制。ともにハイデッカー構造で雄大な景色を眺めるのが魅力です。(アレ、Ⅱ世は…?と思った方は次の項目で)
21世紀に入ってから久大本線は豪雨災害による寸断が度々起こっており、その度に特殊ダイヤによる運行にせざるを得ず、しかも2020年豪雨ではキハ71系が孤立化した由布院駅で長期間足止めを食らうという事態になるなど、何かと災害に悩まさせる列車でもあります。

キハ183系「あそぼーい!」

熊本から豊肥本線を経由して大分・別府へ向かう4両編成の観光特急。阿蘇雄大な地形を眺める事ができる豊肥本線はJR黎明期から観光列車が走っており、古くはSL列車「あそBOY」、その後継の快速「あそ1962」を経て、九州新幹線全線開業の一環で本列車が登場しました。
先頭は運転台を2階に設け、前面のワイドな車窓を楽しめるパノラマ構造で、車内外にはいたる所にマスコットの「くろちゃん」が配され、一部の座席は親子で座る事を前提に窓側の背もたれを低くした「くろちゃんシート」を設けているなど、「親子で楽しむ事」をコンセプトにした設備を有しています。
…して、このキハ183系という車両、実はJR九州ではこの4両のみ存在する形式であり(本来は北海道に大量に投入された特急車両)、しかもこれまで多くの観光列車に「ジョブチェンジ」しながら今に至る稀有な車両なのです。
JR黎明期、長崎にあったテーマパークへのアクセス列車「オランダ村特急」として赤と青の白の装いでデビューし、その後「ゆふいんの森」の増発用として、キハ71系の「Ⅰ世」同様緑色の装いの「ゆふいんの森Ⅱ世」へ改造。そのゆふいんの森キハ72系の「Ⅲ世」の登場で任を解かれ、今度は最初のオランダ村特急時代の色に再改造されて大村線の特急「シーボルト」へ転出。そして九州新幹線部分開業に合わせ、古代漆色を身に纏い「ゆふDX」として久大本線に戻り、その後塗装も黄色に変更。そして2011年、「あそぼーい!」へ再々々々改造(!)されて現在に至ります。

・DF200形+77系客車「ななつ星in九州

水戸岡氏が長らく考案していた「クルーズ列車」を遂に実現した列車で、日本の鉄道において最も豪華な内装と誇り、数日にわたるツアーで構成される「乗る事を楽しみにした列車」の最高峰、「豪華クルーズトレイン」であり、後に登場したJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」、JR東日本の「トランスイート四季島」とともに、豪華クルーズトレインをの3強を形成しています。
九州の"7"つの県、"7"両編成の"77系"客車など、幸福を表す数字「7」を由来とした列車名を持ち、JR九州の全路線を通れるよう、現代では珍しくなったディーセル機関車+客車の編成になったのも特徴のひとつです。
主に1泊2日のコースと、九州全土を回る3泊4日のコースが設定され、列車に乗るだけでなく、専用のシャトルバスによる移動や、停車地での旅館に宿泊する日もあるなど、まさに「豪華客船の陸上版」といった大人のテイストを味わえるものとなっています。ドレスコードもあるくらいなので。
幾度もの災害不通に伴う運行ルートの変更、更にはコロナ禍の影響による運行休止など、ここ数年は天災・疫病に悩まされている状況ですが、それが明け、再び九州の「星」になる事を今は祈るばかりです。

787系「36ぷらす3」

 2020年秋に運行を開始した最も新しいD&S列車であり、九州をぐるっと5日かけて1周するという運行ルートは先述の「ななつ星」と似ていますが、大きく違うのは、運行コースが宿泊をしない1日単位。つまり、日ごとにルートが全く違うという所にあります。日帰りで1コースだけ楽しむのもよし、ホテルに泊まりながら全コース楽しむのもよし。「ななつ星」のコンセプトを膨らました、より多くの人に九州の魅力を楽しめる列車です。
使用する787系ボネブラックは、かつてJR九州の看板特急「つばめ」として水戸岡氏がデザインしたもの。九州新幹線全通後は、他の九州各地の特急で走るようになり、今や汎用特急車という立ち位置ですが、そんな九州じゅうにいる787系が、再び水戸岡氏の手で特別な装いを纏ってその九州じゅうを一周するというのはちょっとしたエモみがあって個人的には好きです。運行区間には在来線特急時代の「つばめ」が走っていた肥薩おれんじ鉄道線も通るのもまたエモエモポイントだと思います。

九州新幹線800系「つばめ」

そして、ヤマカサが九州の鉄道の最高峰と評した九州新幹線
その主力車両は山陽新幹線に直通するN700系ですが、九州新幹線"単体"の象徴とするなら、やはり800系と考える人は多いでしょうか。
800系は新八代鹿児島中央間の部分開業で登場した車両で、基本設計は700系ベースですが、その外装デザインや車内デザインもまた水戸岡氏の手によるものでした。特に前頭部は、700系のデザインコンペで没になった案を元にしたという逸話があり、そこに水戸岡氏のデザインセンスが加わった事で、新幹線史上唯一無二の独特なデザインになりました。
その魅力は全線開業後、主に各駅停車の「つばめ」運用がメインとなっても健在で、九州内でのみの運行だからか、他ではできない大掛かりなラッピングを施す事もありました。
そしてつい最近あったトピックが、全線開業10周年を記念した企画「流れ星新幹線」。全線開業は3.11で盛大に祝えず、その後も、新幹線も不通になり800系1編成が廃車となった熊本地震を初めとした災害による幾度もの鉄道被害、そして全通10周年となる今年はコロナ禍真っ只中…この10年間、何度も悲しみの雨が降りかかった九州新幹線。だからこそ、そんな悲しみを乗り越える「願い」を生み出したのかもしれません。
全国から募った「願い事」から、132の願いが車体のラッピングに、645の願いが車内に掲げられ、計777つの願いを乗せた800系は、車内に搭載されたムービングライトとバーライトにより、窓から映し出される光の軌跡を夜空に描きながら九州新幹線を北上。そしてクライマックスは、筑後船小屋駅手前で10分間停車し、特設会場に設けられた映像とともに繰り広げられる、新幹線が描く光のショー…! その様子はTwitterでも各地から順次届けられており、私も感動しました…!
安全運行が命題である故、色々と制約も多い新幹線でここまでの事をやったのがホント凄かったですね。新幹線でもまた、他にない「個性」を生み出したと思いますホント。

ちなみに、シンカリオンのベースになっているのは旧仕様Z仕様ともに、全線開業に合わせて増備された「新800系」であり、従来の800系とは、ライトカバーが膨らんだものになっていたり、帯が途中でカーブを描いている点が異なる所です。また内装も一部に金箔が貼られているゴージャスな仕様になっています。

博多南線

…そして最後に、「九州の鉄道の底力」としてヤマカサがアブトにぶつけたのが博多南線
アブトが言った通り、この路線は元々は博多から約8キロ先にある車庫「博多総合車両所」への回送ルートを活用した路線です。なぜこれが在来線扱いなのかというと、高速で走行していないから。もともと都心部であるため高速走行がしづらく、更にたった8キロともなると高速域になる前に着いてしまうので比較的低速で運行されるのですが、それだと新幹線の定義である「200km/h以上での高速走行」に満たないため、在来線扱いになるのです。
回送ルートの旅客化といっても、すべての回送列車が博多南線の列車になるのではなく、主に「こだま」で使用する8両編成の500系や700系が使用され、運賃も特急料金込みで300円。かなりお安く新幹線車両に乗れる路線でもあります。
このような路線が生まれた背景には、博多開業当時、車両基地の周囲には何も無かったのが、福岡都市圏の広がりとともに基地周辺にも宅地化が進んだ事にありました。福岡には天下の西鉄バスがありますが、それでもラッシュ時は渋滞で定時運行がままならない事態。そこで当時はまだ回送列車しか通らなかった博多と基地を結ぶ線路に白羽の矢が立ち、それを活用する運びとなった訳です。
…そういった経緯もあり、実は博多南線は、九州の在来線ながら、所属は「JR西日本」だったりします。かつては博多南の駅業務をJR九州に委託してましたが、現在は直営になってるそうです。

 

それでも。

戦いの後、オカルト知識ではなく科学的分析で敵を倒せた事を指摘し、改めて、非科学的な妖怪など認めないと一蹴する。
それでもシンは、妖怪はいる!と絶対的自信を露わにするのだった…

まさに予告で言われた通りの「水と油」二人が相容れる事はあるのだろうか…?